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語り継がれる『女殺油地獄』

本当ならば、今頃はまだのぞみに乗っている予定でした。
江戸を17時発の切符を購入していたので。
ギリギリまで江戸で楽しむ予定でした。
しかし変更してもらい、9時半過ぎには江戸を出立し、お昼過ぎには家に辿り着きました。
早く帰って来た理由は行く前から体調が今ひとつで、明日からの仕事に備えて帰ってゆっくりしようと。暑いからいつものように山南敬助&新選組ゆかりの地めぐりをする気も今回はなかったし。しかし一番の理由は、昨日の六月大歌舞伎の千穐楽の昼の部で、『女殺油地獄』を観終わって、放心状態で何をする気にもなれないからだと思う。

今日の朝の8時過ぎ、宿から東京駅に向かう途中、歌舞伎座の前を通ると、垂れ幕を取り外す作業をされていたようでした。すでに昨日に写真で撮って記事に載せた千穐楽の垂れ幕は取り外されていました。
終ったんだと言うことを実感。

歌舞伎にはまって、正確には孝太郎姉さんにはまって約2年半。一杯いっぱい観てきましたが、孝太郎姉さんに見惚れることは毎回のことですが、そのお芝居全体や役者さんの演技にとてもとても感動して鳥肌が立ったとか、涙が出そうになったとか、いうことはありませんでした。

しかし昨日は違いました。
仁左衛門さんが演じる河内屋与兵衛はこれでラストという昨日の『女殺油地獄』は最後の殺しのシーンでは仁左衛門さんの演技、気迫、息子の孝太郎さんとの絶妙なやり取りは素晴らしく、与兵衛が花道を去っていくところでは涙が出そうでした。と言うか、目がウルウルでした。
素晴らしかったです。感動でした。
特に一番感動したシーンはお吉@孝太郎が客席に背を向けて客席の方に海老反りになって、与兵衛@仁左衛門が前からお吉を殺そうとする型のところ。お吉を演じている孝太郎さんは体が柔らかいのでとてもきれいに反り、そして与兵衛を演じる仁左衛門さんは与兵衛の狂気を表情でとても上手く出していました。このシーンではいつもすごいと思うのですが、昨日は今までで観た中で一番近い席だったたこともあるのでしょうが、すごい迫力でした。鳥肌が立ちました。また自分の前に居る息子に自分の与平衛をしっかりと見とけよというものが伝わってきました。

私が感動し、興奮したようにみなさん同じだったようで、与兵衛@仁左衛門が花道を去って行く時には客席から割れんばかりの拍手。素晴らしい芝居をありがとういう拍手はなかなか鳴り止まず、そしてそれはいつのまにかカーテンコールになっていました。
昼の部の終わりを告げるアナウンスが流れていたようですが、拍手で聞こえない。立つ人はいない。
でもね、この演目で、そして片岡仁左衛門さんということを考えると、登場しないということはわかっていました。
しかし一度、カーテンが開いちゃったのよ。
そこにお吉@孝太郎は先ほどと同じように倒れて死んでいた。孝太郎さんも放心状態だっただろうな。
下手から上手の方にカーテンを閉めるようにというようなことを灯りで合図しているのが見え、カーテンはすぐに閉まりました。

出てください。
出ないよ。

と言うようなやり取りがあったんだろうな。
出ないよ。だって与兵衛がここに戻ってきたらダメだもん。

こんなこともあったわけですが、とにかく、語り継がれる『女殺油地獄』を私が観たのは間違いない。
by eri-seiran | 2009-06-28 18:39 | 歌舞伎

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