孝太郎さんの女方

6月24日の江戸の国立劇場にて、第70回 歌舞伎観賞教室『双蝶々曲輪日記―引窓―』 、また25日の歌舞伎座での『六月大歌舞伎』の夜の部のレポを書きたいという気持はあるのですが、観賞してから10日程経ってしまったこと、歌舞伎ファン新参者ですから、自分が感じたことを上手く文章で表現できないこと、また船乗り込みを観てから、すでに大阪松竹座での『七月大歌舞伎』に気持がいっていることなどから、江戸での観賞も含めて片岡孝太郎さんのことについて書きます。

人を好きになる場合、その人に出逢い、次第に気になる人となり、そして気が付いたら好きになっていたというパターンが多い。
山南敬助もそうだった。ドラマ『壬生の恋歌』で気になり、そして色々と調べていくうちに好きになり、20年以上も想い続けてきたわけです。
しかし孝太郎さん演じる女方はそうではなかった。去年の12月、京都の南座での吉例顔見世興行の夜の部の「俊寛」での海女千鳥@孝太郎に逢った瞬間、恋に落ちた。ここで出逢っていなかったら、ここまで歌舞伎にはまること、もちろん、孝太郎さん演じる女方にゾッコンになることはなかっただろう。
だってその1週間ほど前に昼の部を観に行き、「寿曽我対面」での化粧坂少将@孝太郎にすでに出逢っていたのだか、綺麗だな~くらいしか思わなかった。昼の部は一演目だけだったが、夜の部は「俊寛」の後に口上があり、さっきの千鳥の人だとチェックし、最後の「乗合船恵方萬歳」でも、さっきの千鳥の人が今度は女船頭お浪になっている。わ~大工芳松@片岡愛之助と二人で舞っていることに感動。もちろん、愛之助さんは『新選組!!土方歳三 最後の一日』にて初めて知ったわけです。この時点で二人が同じ松嶋屋、いとこ同士になるということは知らない。
ちなみに夜の部では、「京鹿子娘道成寺」にも所化役で出演。しかし女方でなかったし、所化はすごい人数にすごいメンバーだったし、また同じ格好なので、チェックするのも大変でした。

長々とここまで去年の『吉例顔見世興行』の夜の部の孝太郎さんの演目について述べてきたわけですけれど、あの海女千鳥@孝太郎に出逢った瞬間、恋に落ちたのです。
そう、あの時、あの場所で、恋に落ちた。

海女千鳥@孝太郎は、美しく、色気があり、可愛らしく、高貴な人ではないけれども品がある。男性が演じているということを全く感じさせなかった。そんなところだろうか、恋に落ちた理由は・・・

その後の4月の『浪花花形歌舞伎』、同じく4月の『四国こんぴら歌舞伎大芝居』で、いくつかの演目、役を観賞してきたけれど、やはり、どれもいいと思った。この方の女方は良いと思った次第です。

今回、東京遠征にて『双蝶々曲輪日記―引窓―』のお早@孝太郎に逢ってきたわけですが、東京まで観に来て良かったと思えました。これまで観た『敵打天下茶屋聚』での早瀬伊織妻染の井、また『夏祭浪花鑑』での団七女房お梶とはまた一味違う女房役が良い。

元々は遊女だったお早@孝太郎は、夫である南与兵衛@中村扇雀、姑のお幸@坂東竹三郎と貧しいなからも幸せに暮らしていた。ある日、お幸の実の息子(与兵衛は実の息子ではない)である濡髪長五郎@坂東彌十郎がお幸を訪ねてやって来る。長五郎は殺人を犯して、追われる身となっており、最後に小さい時に別れた母親に会いに来た。また偶然にも長五郎は遊女だった時のお早を知っている仲でもあった。しかしこの日、お早の夫である与兵衛は町人から郷代官となり、その初仕事が長五郎を捕らえること。

与平衛、お幸、長五郎、そしてお早のそれぞれの思いが交錯し、それぞれの役者がそれぞれの心情を上手く表現していました。
お早@孝太郎も、義母を思う気持、夫を思う気持、そして長五郎を思う気持を上手く表していたなと新参者ながら思ったわけです。自分が孝太郎さんの女方に惚れているから贔屓目があるだろうな~とも思ったのですが、その日の夜の呑み会で、お早@孝太郎は評判が良いみたいよと教えてもらい、やっぱりね~と思っちゃった。ただの贔屓目ではなかったのよ(笑)。

これを観てから、『新世紀の歌舞伎俳優たち』(上村以和於著 三月書房出版)の片岡孝太郎さんのところを読んだら、以前にも『双蝶々曲輪日記―引窓―』にてお早を演じており、その演技をとても誉めていらっしゃいました。

さて、今回、お早@孝太郎に逢った翌日は、歌舞伎座で『六月大歌舞伎』の夜の部を観賞。
これは一度、歌舞伎座でも観賞してみたいという理由があったわけですが、孝太郎さんが出演されていないのにそれだけの理由だけでは高い料金を払ってまでは観ようと思わない。それなら孝太郎さんが出演の時に観たらいいわけで・・・
ただ今回、観たいと思ったのは、観たいと思った演目があったこと、それにちょっとお目当ての役者さんが出演していたからです。
それは、『元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿』で、主人公の徳川綱豊卿を演じたのが、孝太郎さんの父君である片岡仁左衛門さん。これは孝太郎さんの父君だからという理由ではなく、片岡孝夫さんの時、ゾッコンではなかったけれど、すてきなおじさまだな~と思っており、また孝太郎さんにはまってから、松嶋屋にもはまったわけで・・・
俊寛の時もそうでしたが、やっぱり仁左衛門さんもいいな。この方が父親であり、また師匠であるからこそ、孝太郎さんという良い役者が生まれたんだな~と思いました。

この綱豊卿@仁左衛門から寵愛を受けるお喜世@中村芝雀、そのお喜世の兄であり、赤穂浪士の一人である富森助右衛門@市川染五郎、また江島@片岡秀太郎、新井勘解由@中村歌六が主な登場人物だったわけですが、観ながら、孝太郎さんのお喜世もいいだろうな~とか、もう少ししたら、江島を演じる時も来るんだろうな~とか思ったりしていました。そしたらすでにどちらも演じていることが、後になってわかりました。
平成16年(2004)8月の歌舞伎座で、綱豊卿@染五郎、富森助右衛門@勘太郎、お喜世@七之助、新井勘解由@橋之助、そして江島@孝太郎。あ~このメンバーで、孝太郎さんの江島は納得。今、書きながら改めて驚いたのが、平成16年(2004)8月ということ。そうです、大河ドラマ『新選組!』の『友の死』が放映された忘れもしない、熱く、悲しい8月だった時です。
だから藤堂平助@中村勘太郎は江戸にいて、山南敬助@堺雅人の死に目に会えなかったのね、それは違うってば(苦笑)。
勘太郎君はまだクランクアップではなかったよね?平行してやっていたのかしら?

平成12年(2000)に、これも歌舞伎座で、綱豊卿@仁左衛門、富森助右衛門@段四郎、江島@宋十郎、新井勘解由@我當、そしてお喜世@孝太郎。
私、今回の『元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿』の第二幕第三場「御浜御殿 元の御座の間」を観て、お喜世役って難しいな~と、新参者ながら思ったのです。綱豊卿と富森助右衛門の息詰まるやり取りがあるのですが、そこにお喜世もいて、二人のやり取りを見て、聞いているのです。しかし下手すると、お喜世の存在感が全く感じられなかったり、だからといってお喜世が出すぎてもいけないのだろう。

そしたら、先ほど挙げた本にお喜世@孝太郎のことが高く評価されており、

とかく不得要領に終りがちな役を勤めて、心くばりの緻密に行き届いたお喜世像を、見事に描き出してみせるほどの存在になっている。

と、書かれてありました。これを読んで、ぜひ綱豊卿@仁左衛門、お喜世@孝太郎を観たいな~と思った次第です。

またこの本において、著者は、孝太郎さんの女方を高く評価されており、それを読んで、自分がただ今、ゾッコンである理由も改めてわかってきました。

若さ故の美しさや勢いで観客を楽しませる花形から、着実な地形で芝居を実のあるものにする中堅へと、新たな段階へ昇ってきたのだといえる。

・・・「花」とは一方で天性のものであり、一方では、技巧を通じて体得してゆくものだということだろう。


私が観た限り、また思う限りでは、孝太郎さんにはどちらも備わっていると思う。
他の方の女方も観てきたが、恋には落ちませんでした。綺麗だな~とは思ったりしたけれど。
孝太郎さん演じる女方は、現代で一般的に言われる美人、スタイルのいい女性とは言えない。
ただ『菅原伝授手習鑑・道明寺』での苅屋姫や『松栄祝嶋台』での芸者孝千代など写真で見る限り、とても綺麗だと思う。
また玉三郎さんや扇雀さんのように長身ではない。七之助君のように細身でもない。しかし私はそこがまた好きなんだろうな~と、なんとなく思っていたら、この本にもそのことが書かれており、

いわゆる現代的な容姿とはむしろ対照的に、やや小柄で、ぽっちゃりと柔らかみのある、昔ながらの日本の女性らしい容姿が、一種の親密さとなつかしさのようなものを見る者に抱かせる。

そうなんだよ。そうなんです。
とてもとても納得。そこもゾッコンの大きな理由なんだ。また声も好き。

今度の「鳴神」の雲の絶間姫は特に楽しみなんです。もちろん「鳥辺山心中」の遊女お染も「女殺油地獄」の女房お吉もね。

あ~なんか思いっきり、孝太郎さんについて書いちゃった(笑)。
とにかくこれで、取りあえず、江戸での観劇のレポ(とは言えないけれど)を大阪松竹座『七月大歌舞伎』鑑賞までに終了できました。
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by eri-seiran | 2007-07-04 23:43 | 歌舞伎

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